中小企業の求人は大変

説明会を増やし、大学と連携強化

大手企業による大量採用の復活で、中小企業の合同説明会は空席が目立つ(大阪市北区のホテルで)

 大阪市内のホテルで11月下旬、中小企業30社の合同企業説明会が開かれた。だが、5時間にわたる説明会に参加した学生は、計103人。各社のブースでは、手持ちぶさたな人事担当者の姿が目立った。私立大4年の男子(21)は「大手企業の就職活動がうまくいかず、中小にも目を向けるようになった」と本音を漏らした。

 主催した大阪府中小企業家同友会の中村泰二・大学求人部長は、「大手が採用数を増やした2004年ごろから人材確保が難しくなった」と危機感を募らせる。年2、3回だった説明会を、今年は5回に増やしたという。

 リクルートグループの研究機関「ワークス研究所」によると、来春卒業予定の大学生・大学院生に対する民間企業の求人は82・5万人と、バブル期の91年(84万人)に次ぐ高水準だ。企業規模別の求人倍率は、従業員1000人以上の0・75倍に対して、1000人未満は3・42倍の「超売り手市場」で、人材の争奪戦が激しい。

 インターネットの求人サイトへの登録などに取り組む中小企業は多いが、「決め手がない」(奈良県中小企業家同友会)のが現状だ。このため、地元の大学や経済団体との連携を強化する例も増えている。立命館大が今年度手がける「若者と中小企業とのネットワーク構築事業」では、公募した大学生・大学院生11人を中小企業に派遣し、社長と一緒に行動させる「社長のカバン持ち」などを行っている。実際の業務を体験することで、風通しの良さなど中小企業の魅力を知ってもらう狙いだ。

 大阪商工会議所が03年に始めた「トライアル雇用事業」は、「紹介予定派遣」と呼ばれる採用システムを活用する。希望者が2〜6か月間、中小企業で派遣社員として働き、双方が合意すれば正社員に登用される。試しに働くことで「大手と比べ業務内容や社風がわかりにくい」という不安を解消しやすい。今年10月末までの約3年間で、制度を利用した209人のうち118人が正社員となった。

 社員20人余りでコーヒーサーバーのレンタルなどを手がけるホーム(大阪市)の大薮孝志社長は、「採用活動に社運をかけている」と言い切り、就職セミナーなどで目を付けた学生を自宅の宴席に招くなど、「一本釣り」に力を注ぐ。中小企業にとって、社員一人ひとりに対する期待は、大企業と比べものにならないほど大きい。厳しい環境下での採用活動の成否が、各社の将来を左右しそうだ。
(2006年12月28日 読売新聞)